前記事では北斗電子さんHSBRH850F1KH176向けにRH850自動コード生成し、RH850/U2A 用のCANドライバサンプルコードをRH850F1KH用に移植し、CAN送信をテストまでできました。今回は受信をテストします。その覚書きです。テスト環境は前記事と同じです。一先ず送信までできていれば、ハード的には送受信OKのはずです。
受信ルール数の設定
受信ルール は旧来のCAN Message Box の CAN ID Mask を包括したものといえます。受信ルール 数は以下のようになっています。
適用 | 受信ルール数 |
CAN UNIT 一つあたり | 256 |
CAN Cahnel 毎 | 任意、0~256 |
受信ルール のCh毎割当ては r_rh850_can_cfg.c にて以下のように設定します。Channel の group が 2つに分かれ 、リトルエンディアンなので定義の一番下が Ch. 0 になります。分かっていてもついつい上から Ch .0 と思い書いてしまいがち、なかなか気付ずトラップです。Ch毎割当数==0では受信無反応となってしまいます。
can_rx_rule_num_t g_can_rx_rule_num[ USED_UNIT_NUM ] = {
// ========================== U n i t 0 設 定 ==========================
{
{ // group0 (ココ注意Trap:一番下がch0)
0, // Ch3
0, // Ch2
16, // Ch1
16, // Ch0
},
{ // group1 (ココ注意Trap:一番下がch4)
0, // Ch7
0, // Ch6
0, // Ch5
0, // Ch4
},
},
};
受信ルールの定義
CAN ID 一つづつに受信ルール を割当てれば、 F1KH の176pinなら 256の CAN ID+データ を受信できそうですが、後述する 受信Buffer の制約を受けます。 むろんCAN ID MASK値を絞って一つの受信ルール で複数のCAN IDでを受信してもOKですが、CANデータは素早くRAMに退避する必要があります。
取り急ぎテストでは以下のように、受信ルール が 1つにつき、CAN ID 一つで行うとします。
CAN Ch. | CAN ID | 受信ルール |
0 | 0x100 | 0 |
0 | 0x101 | 1 |
1 | 0x200 | 16 |
受信ルール の定義コードは以下の通りです。受信ルール の4つのSFR: ID、MASK、ポインタ0、ポインタ1 詳細はF1KHマニュアルを見ます。MASK値の ID種、Frame種、Node種は 基本1を立てます。32bit 16進数表記では間違い易いため、 弊方では設定マクロを追加しています。
const uint32_t g_rxrule_table[ USED_UNIT_NUM ][ CAN_RX_RULE_NUM ][ 4 ] = {
// ========================== U n i t 0 設 定 ==========================
{
// ------------------------ C h 0 設 定 ---------------------------
{ // [0]
CAN_RX_RULE_ID(0/*標準ID*/, 0/*DataFrame*/, 0/*他Node*/, 0x100/*ID*/),
CAN_RX_RULE_MASK(1/*ID種*/, 1/*Frame種*/, 1/*Node種*/, 0x7FF/*ID*/),
CAN_RX_RULE_PTR0(0x0000/*label*/, 1/*buf使用*/, 0/*buf番号*/, 8/*dlc*/),
CAN_RX_RULE_PTR1(0x000000/*送受信FIFO*/, 0x00/*受信FIFO*/),
},
{ // [0]
CAN_RX_RULE_ID(0/*標準ID*/, 0/*DataFrame*/, 0/*他Node*/, 0x102/*ID*/),
CAN_RX_RULE_MASK(1/*ID種*/, 1/*Frame種*/, 1/*Node種*/, 0x7FF/*ID*/),
CAN_RX_RULE_PTR0(0x0000/*label*/, 1/*buf使用*/, 1/*buf番号*/, 8/*dlc*/),
CAN_RX_RULE_PTR1(0x000000/*送受信FIFO*/, 0x00/*受信FIFO*/),
},
・・・ 中略 (定義の欠番はNG) ・・・
// ------------------------ C h 1 設 定 ---------------------------
{ // [16]
CAN_RX_RULE_ID(0/*標準ID*/, 0/*DataFrame*/, 0/*他Node*/, 0x200/*ID*/),
CAN_RX_RULE_MASK(1/*ID種*/, 1/*Frame種*/, 1/*Node種*/, 0x7FF/*ID*/),
CAN_RX_RULE_PTR0(0x0000/*label*/, 1/*buf使用*/, 16/*buf番号*/, 8/*dlc*/),
CAN_RX_RULE_PTR1(0x000000/*送受信FIFO*/, 0x00/*受信FIFO*/),
},
・・・ 中略 (定義の欠番はNG)・・・
受信Buffer番号の定義
RH850では受信内容の取得方法が2つあるようです。今回はその中でシンプルな 受信Buffer による受信でテストします。 受信Buffer 数は以下のとおりです。
適用 | 受信Buffer数 |
CAN UNIT 一つあたり | 128 |
CAN Cahnel 毎 | 任意、0~128 |
CAN ID に一つづつ受信Buffer を割当てれば、 F1KH の176pinなら 128コの CAN ID+データ を同時期に受信でき、最新のそれぞれのCANデータ内容をSFRに保持でき、最も効率的といえます。むろん受信Buffer を複数のCAN IDで使いまわしてもOKですが、CANデータは素早くRAMに退避する必要があります。
受信Buffer は 送信と異なり CAN Channel の割当てはなく、一つの CAN UNIT 内で自由です。 受信ルール が 1つにつき、受信Buffer を一つ割当てます。上記のコード例では以下のように割当てています。
CAN ID | 受信ルール | 受信Buffer |
0x100 | 0 | 0 |
0x101 | 1 | 1 |
0x200 | 16 | 16 |
受信ルールの設定
設定は、API: R_CAN_Init() の中で行われます。CAN通信中には行うべきものではないようです。注意点は各数は以下のようななっています。
適用 | 数 |
受信ルール | 255 |
受信ルールSFRセット | 16 |
これは受信ルール のページ番号を 0~15 に切替えながらSFR を使い回す仕組みになっています。弊方では「U2Aとの違い?」と勘違いしてしまいました。 受信ルール の現在設定値もSFR値をウオッチしても分からないんです。 受信ルール は一つづつテストしていくしかなさそうです。
CAN Frame受信
受信Buffer による受信では受信完了割込みは発生しません。 API: R_CAN_ReadRxBuffer() でポーリングチェックします。ただCANドライバのOriginal仕様では 、ポーリング周期内に複数CAN Frame受信するケースには対応していません。弊方ではここは改造しました。その呼出し部は以下のような感じです。
uint32_t last_tm = 0;
uint32_t now_tm = 0;
uint8_t CAN_RxBufIdx[ CAN_RX_MAX_1MSEC ]; // 受信Buffer Index
can_frame_t CAN_RxBuffer[ CAN_RX_MAX_1MSEC ]; // 受信Frame内容
while ( 1U ) {
/// 初期化待ち ///
if ( complateInit == FALSE ) {
・・・ 中略 ・・・
}
}
/// 初期化済み ///
else {
now_tm = R_Config_TAUB_Get1msTimer();
if ( now_tm - last_tm > 0 ) { // 1ms経過した
// 全CHからの受信CHECK
retCan = R_CAN_ReadRxBuffer(
0 /*unit*/,
CAN_RX_MAX_1MSEC, /* 同時受信Frame max数 */
CAN_RxBufIdx, /* 受信あったBuffer番号*/
CAN_RxBuffer /* Frame内容*/ );
}
テストは BUSMATER から疑似CAN Frame を送信し、e2Studio + E1 でStudioで内部をウオッチして確認します。Ch.0 、Ch.1ともに。
これで RH850F1KH で、自動コード生成とサンプコードを用いて最短(?)で動作検証およびプラットフォーム作成ができました。延べ3week程度でしょうか?
手順とそのポイントは以上ですが、RH850F1KH を直ぐに動かしたい、工数がない、自身がない会社さん等はご相談を受付けています。ある程度の有償でもよろしければこちらまでご一報ください。